見出し画像

ビジュアルプログラミングアワードから見えた子どもたちのクリエイティブ ~FUKUOKA Creators Award 2017受賞作品を分析してみる~

KK:FUKUOKA Creators Award 2017、Springin’のアワードとしては最大級の規模となりました。無事授賞式も終わり、受賞作品もブログでご紹介していますが……。ここは審査員とはちょっと違った視点から、普段Springin’についての記事を書いているPRチームの視点から入賞作品を見てみたいなぁと思って今日は集まってもらいました。

Bianca:Yes!

Sako:いままでこうやって3人で作品を一緒に見るってことってなかったね。私はここ最近ずっとSpringin’を使ったゲームの作り方の記事を書いているんだけど、ワークを分解して中身をじっくり見ると、ほんと奥が深くて勉強になる。自分以外の人がつくったSpringin’のワークを見ると発見もあって勉強になるよね。

KK:確かに、作ってる本人は直感的にやってるかもしれないけど、実はすごいことってことがよくありますもんね。じゃあ早速見ていきましょう!

PRチーム自己紹介

画像1

Sako(三木祥子)しくみデザインのお絵かき担当。1児の母。プログラマ経験がない立場から、Springin’の楽しさを伝えるために奮闘中。

画像2

Bianca(山口ビアンカ)しくみデザインで海外向けのプロモーション担当。1児の母。母として、日本以外の文化を知っている立場でSpringin’やpaintoneの楽しさを世の中の人々に伝えたい。

画像3

KK(香月啓佑)この6月にしくみデザインにジョインしたコミュニケーションマネージャー。東京で家電メーカー勤務、そしてネットメディアの運営を経験して、学生時代を過ごした福岡へUターン。プログラマ経験あり。Perlからスタートして、今はRuby。

パクパクアイス

画像4

KK:まずはクリエイティブ福岡推進協議会会長賞を受賞した「パクパクアイス」から。

Bianca:会長は高島福岡市長ですよね。実際の今回の大賞的な感じかな。

Sako:審査委員長のシュンスケのコメントで総合的なレベルの高さが評価されていたけど、私もそう思う。属性設定はあまり難しいことはしてないんですよね。シンプルな属性の組み合わせで実現されているんだけど、それぞれの属性が効果的に設定されてる。ちゃんとプログラミング的に設計されている作品だと思いました。

KK:それは確かに。ワークショップで説明した「コロコロゲーム」で使った属性を中心に、そこで自分が分かっている範囲でやりたいことを過不足なく実現しているんですよね。

Sako:アイスクリームを飛ばしてコーンの上に載せるんだけど、屋根を斜めにしてゲーム性を高めて、屋根の【高反発】を設定することで、難易度を高めてるんですよね。一見しただけでどんなゲームなのかも分かるし。

画像6

この天井が斜めになっているのがポイント

Bianca:あと何といっても絵がかわいい! あと「パクパクアイス」ってネーミングもいいね!

星キャッチ

画像7

KK:続いて審査員特別賞(中村俊介選出)の作品。

Sako:これも選評にあるとおりゲームとしての完成度の高さが光ってると思った。レベル選択とその調整、当たり判定にクリア・失敗判定。そしてそれぞれの画面表示とUI設計。シンプルだけど全部過不足なくできてる。

KK:全部の星をキャッチしなくても、実は設定された星を取れば次の面に行けたりして。

Bianca:「とりあえずやってみて」という姿勢がかっこいい。

Sako:ただゲームとしての要素ももちろんだけど、ゲームそのものもちゃんと練られていて。アイテムの形状とそのアイテムに与えられた属性の【高反発】により不規則性がつくられてる。だから何度プレイしても飽きない。さらにゲームをクリアすると、もう一度やるか、ホームに戻るか、次のレベルに行くか選択できるようになってる。ゲームをプレイする側のことを考えている点も素晴らしいなぁと思いました。

画像7

TOP画面。レベルの選択が可能。これによりゲーム全体もわかる。

画像8

この操作アイテムの形状と「高反発」により動きに不規則性が生まれる。

画像9

次どうするか決めさせてくれる。

KK:僕は最近、仕事の合間に星キャッチしてますね。さよならソリティア!

Bianca:いつの間に笑

私の好きなものはどれ?

画像10

KK:千原せいじさんが選出した作品がこれですね。自分が作っている作品を芸人さんに見てもらえる機会ってなかなかないですよね。

Sako:レポートに載ってる選評も千原さんならでは、という感じで私も好き。口を開いたままの顔が横にスクロールするって見た目のインパクトもあるしね。

Bianca:でも単に面白いゲームってだけじゃないんだよね。

KK:ちゃんと考えられてプログラミングされてるんです。Springin’の作品は誰でもダウンロードして遊べるだけじゃなくて、そのゲームがどう作られているかってことも見ることができて。この作品も上から落ちてくる果物が落ちてくるタイミングがランダムになるようなしくみが入っているんですよね。

Sako:そうそう。ワーク作成画面を見てみると、上に並ぶ果物の下には背景色と同じカゴの形をしたアイテムがあって。このカゴを消すと果物が下に落ちてくるようにできてる。

Bianca:この背景と同色のアイテムをうまく作れるようになると、一気に作品のクオリティもあがるよね。プレイ画面では背景と同化して透明に見えるから。

画像11

白(背景と同じ色)のアイテムがたくさん。

Sako:ただそれはいきなりは難しいし、プレイさせたときにどう動いているかがわからないから、まずは普通に色付きのアイテムで作って、作りたいものの仕組みを考えたあとに、それを背景の色と同じにして見えなくするといいと思う。今回みたいなアワードに出展する作品作りじゃなくて、プログラミングの学習をするときは「なにがどう動いているか」を見ながら作るほうがいいと思う。

ワープコロ

画像12

KK:ここからは入賞作品ですね。ひとつの面しかないシンプルなコロコロゲームですが、結構手強いゲームですよね。

Sako:1面しかないけど、実はその1面の中で難易度が上がっていくようになっていて。1回でクリアできる人はほとんどいないんじゃないかな。ぜひ皆さんに楽しんでほしいので、どこが工夫されているのを言えないのが悔しい(笑)

KK:ネタバレにならない範囲で言えることないですか?

Sako:それでいうとSpringin’では重力とか衝突とか、実際の世界で起きることをそのまま再現できるようになっているのね。例えば、あるアイテムが右方向に進んでいるときに、止まっている別のアイテムにぶつかると、進んでいたアイテムには左方向に力がかかるよね。今回【ワープ】を使っているんだけど、【ワープ】を持つアイテムにボールがぶつかると、指定したワープ先(対象アイテム)にワープするけど、【ワープ】を持つアイテムにぶつかったときに受けた力(=進行方向と逆向きの力)がワープ先にも反映されちゃう。ゲームとして面白くするために、そのぶつかった時に受ける力をなくしたい、ということで【ワープ】を持つアイテムには全て【物理無効】が使われている。それによって絶妙なゲームバランスになってるんです。ぜひ遊んで、編集画面でそれぞれのアイテムにどんな属性がついているかを調べて見てほしい!

画像13

Bianca:私は色使いが好きだなーって思う。実際のゲームに入る前に説明書きもあって、フリガナも振られているし、私の子どもでも遊べそう。

れんさボール

画像14

KK:これはピタゴラスイッチみたいな作品ですね。

Sako:そう。基本はコロコロゲームと同じしくみだけど、ボール同士の衝突とかドミノ倒しとかのギミックがたくさん入ってる。ちゃんと転がるように細かな調整をしてるんじゃないかな。あと見てほしいのは最後のくす玉が割れるところ。これも背景色と同じアイテムを使って、ボールがゴールしたことを判定したり、くす玉の山がいいタイミングに落ちるようになってる。背景色と同じアイテムをうまく使ってる作品だね。

画像15

Bianca:私はこの作品がどうやってできたのかを見てみたんだけど、編集画面でアイテムリストを見ると使っていないアイテムがいっぱいあるのね。そこにクリエイティビティを感じる! ちゃんと試行錯誤して作ったんだなって。

KK:そうやって他の人が作った作品を分析できるのはSpringin’のいいところですね。

ファーストコンタクト

画像16

KK:そして今回強烈なインパクトを与えた作品がこれですね。壮大な世界観。

Bianca:一番最初のページの「A.D. 4123」って、これは西暦4123年ってこと?

画像17

KK:だと思います。西暦4123年に人類が火星に到達、そしてそこでファーストコンタクトしたものとは……という壮大な世界観のデジタル絵本ですね。

Sako:Springin’でデジタル絵本を作ってくれる子はたくさんいるけど、この作品はページめくりを上にスクロールしているように作っているのが面白いね。ページによって進むスピードをコントロールしてたりする。Springin’の機能を組み合わせて自分でしくみを考えて作ったんだろうね。

Bianca:私はこの作品を作った子に読み聞かせしてほしいな。見ているだけでも面白いんだけど、その独自の世界観の説明を聞いてみたい!

りんごの木

画像18

KK:こちらもデジタル絵本の作品。りんごの木が生えて、実がなって、種が落ちて、また木が生えるというなが~い時間をループでうまく表現してますね。

Sako:この作品の注目はやっぱり最後のシーン。りんごの木がグーンと大きくなるんだけど、ちゃんと根っこ部分が地面に接しながら大きく成長しているように表現している。タブレット端末で写真を拡大するときのこと考えてみると分かるんだけど、普通はアイテムを大きくするときって中央が動かずに上下左右に大きくなるんだよね。でもこれはそうならないようにアイテム同士が重なることができない特性※を活かして調整している。その方法に「そうすればできるのか!」と驚きました。

※重なったままにするためには【ピン】同士の組合せや【物理無効】などの属性が必要

画像20

木と、地平線に上端が合うように配置された地面と同色の正方形のアイテムが重なって配置されていることにより生まれる動きを活用している。

Bianca:あと目立たないけど、地面にコブを作って、りんごの動きとページめくりのタイミングを調整しているのね。こうやってきっかけを設定しているのは上手だと思った。

画像19

動くぼうしと動物

画像21

KK:そして講評では「プログラミングとして一番レベルが高い」とされたこの作品。レッサーパンダを避けつつ、近づいてくる帽子をとるゲームです。

Sako:これも背景色と同じアイテム、そしてそれらにも【コピー】【動力】属性をうまく組み合わせて、レッサーパンダとブタをどんどん表示させているのがホント秀逸。でもそれ以上に私が素敵だと思ったのは、このゲームって最初にデザインスケッチをしているところなんだよね。

Bianca:あ、これもアイテムリストを見るとつかっていないアイテムがたくさんある。

Sako:アイテムリストの一番下にゲームの完成したときの画面の絵があるの。その絵はラフスケッチなのかな。そのラフスケッチから女の子とか帽子、レッサーパンダとか必要なパーツを切り出して、個別のアイテムにしてるの。これってすごくデジタルのよさを活かしている作品だなーと思うのね。紙にアイデアスケッチをしてたら、またそれを再度Springin’上に書き直さないといけないけど、これはコピーを活用してカットアンドペースト的な作り方をしてる。最初は単にお絵かきをしていたのかもね。でもそれを動かしたくなって、しかもゲームまでに発展させたとしたら、それは上手なSpringin’の使い方!

画像22

Bianca:絵を描いてて、それを動かしたくなることって私も子どもの頃にあったなぁ……。でもiPadとSpringin’があればそれができちゃう。


いかがだったでしょうか? 上記の受賞作品はiPhone/iPadでSpringin'をダウンロードいただければ、誰でも動かしてみることができます。ぜひ実際に動かして楽しんでみてくださいね。そしてしくみデザインではまたこのようなアワードを開催したいと考えています。開催が決まったときはいち早くこのブログでお知らせしますね!