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「できた!」という成功体験の重要さ【後編】開発者対談レポートvol.3

2021年10月29日に開催された、しくみデザインのオンラインセミナー「未来の可能性を拡げるSTEAM教育―「できた!」原体験は創造の原動力―」。

今回は、ソニー・インタラクティブエンタテインメント、「toio」の開発者、田中章愛(たなか・あきちか)さんをお迎えして、「できた!」という成功体験の重要性と、STEAM教育と将来の仕事について、お話を伺いました。

聞き手は、創造的プログラミングアプリスプリンギン」の開発者である株式会社しくみデザイン代表の中村俊介


vol.3の今回は、vol.2に引き続き「できた!」という成功体験の重要さについてお送りします。


動画本編はこちらをご覧ください。


「できた!」という成功体験の重要さ

やりたいことがすぐに実現できる

中村:やりたいと思ったことがすぐに実現できるって、僕もすごく大事だと思ってます。実は、スプリンギンのとても大きな特徴は「エラーがない」ことなんですよ。実行した時に、エラーが出て、動きませんって言われることは、絶対ないんです。

僕は「職業:プログラマー」ではない。メディアアートを作っていたので、絵とか音とかも作りつつ、でも動かすためにはプログラムを書かなきゃ動かないので、コーディングは書いてました。

そうなったときに、結構ケアレスミスが多かったりして、打ち間違えたりするじゃないですか。それってやりたいことからしたら、本当にどうでもいいことだと思うんですよ。uをoにしちゃったりとか。そんなことじゃなく、もっと大事なことはあるだろうって。「ピー」って言われて、エラーどこだろうと思って、いろんなとこにブレークポイントを置いて…なんだこんなことか〜というのを、散々やってきたんですよね。

それは勉強になっただろって言われれば、なったかもしれないけど、別にやらなくてよかったと思っていて。それは、どちらかというと機械が悪いと思ったんですよね。こう書いたらこっちだってわかるやろ、機械なんだからさって思うわけです。

それだったら、これは違うから、そっと直しておいてあげたよって言って欲しい、こっそり直しておいてくれたら良いんじゃないかな、って。

だから、スプリンギンを作ってるときに「エラーとか嫌だよね」とエンジニアと話をしました。どうやったら解決できるかねぇってなったときの1つの方法として、「文字を使わない」っていうのが1個の解決方法になったんです。文字を使わない以上、タイプミスは絶対起こり得ないんですよ。

さらに、プログラミングだから、構文とかも当然あるけれど、構文もいっそなくしてしまえと。これがこうなったら、こうなってこうなりますよっていうのを、わざわざ言わなくても、物理的に置いてけばいいじゃないかと。

そうすると、ここでその書き方はちょっと意味がわかりませんって、コンピューターに言われる筋合いはなくなるわけですよ。あなたがわかるようにしか言ってないからね、っていうのが作れるんじゃないかと。

そんなことを考えて、結果的にはその物理現象とか自然現象とか、そういうものって割と人間は学習せずに身につけてるなと思ったので、それを最初から取り入れてあげました。これピンでとめるよとか。一瞬で全員が理解できるわけではないけど「これピンでとめるんだ」って思ったらその後ずっと使える。

世の中でいろいろ人が経験したであろうことをメタファーにして、コーディングのツールとして使うみたいなやり方をしたら、これがすごいサクサク気持ちよく作れるようになった。これは一個の解決法だなと思います。

田中:お絵描き感覚で、こんなにゲームみたいな動きがすぐに作れるって、本当に最初、衝撃的でした。


中村:僕も成功体験がいくつかありました。最初のプログラミングが、何となくできるようになったのはなぜかなと。

僕が中学生だった時は、今みたいな、こんないい環境じゃないですよね。ネットもないし。MSXとか持ってたんですよ。パソコンとゲーム機の間みたいな。そこで、最初からBASICが中に入ってたので、一行のジョークプログラムを書いて雑誌に送ったら載せてくれたんです。「面白いね」とか一言書いてくれたりして。これがもう、めちゃくちゃうれしくて。

作って外に出したら褒めてもらえたというところが、本当に嬉しかったんだろうなと。それで、プログラミングができるって思っちゃったんです。実際は全然勉強してないし、大したこと書いてないんだけど。

だけどプログラミングできるなってそのときに思ったので、その後建築CADの開発の会社に入って、バイトでCAD作ったり。全然できないのに「できます」って入って、やりながらすごい頑張って、その時に勉強してできるようになった。

だから、小さいうちに「自分でできるかも」っていう体験をするのが、その後の自信につながることを、身をもって知ってるんですよね

なので、スプリンギンでは、いろんなサポーター企業さんと一緒に、コラボアワードをできるだけいっぱいしようと。何かで賞を取った経験をした人を、たくさん増やしたいからなんですよね。toioもやられてますよね。大喜利とか。

こんな面白いの作ったよって紹介してくれるっていうことが、作った人に対しては、いい経験というか、喜びになって。それで、その後、何か作ろうって思い続けてくれる可能性もすごくあるかなって。「作った!」、そして「認められた!」っていうところが、その後生きていく上でも、ずっと心の拠り所にすることができるんじゃないかなって思えます

田中:そうなんです。toioでやってる大喜利もまさに想いは一緒だと思います。日頃から、これを糧に生きてる。


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「できた!」「作れた!」という達成感としての成功体験はもちろんですが、周囲の人から褒められたり認められたりする成功体験も、成長過程において非常に重要であることがわかりましたね。

さて、次回はSTEAM教育が将来にいかに役に立つのかについてお話しいただきます。